みなさま何時もありがとうございます。
「生かすも殺すも釜次第!」
最初から物騒な題で?って、なりますが、これは二十数年前、僕が東京修行時代に”旦那さん(親方)”の口がすっぱく成る程、こちらの耳にタコの出来る程聞かされ続けた言葉です。
“釜”とは蕎麦を湯がく釜の事で、その作業にあたっている人を”釜前さん”と呼びます。そば粉の吟味に始まり、色んな行程を経て麺状になり、お客様の口に入る最終行程が湯がき作業になる訳です。
どんなに良い粉を使っても、名人と呼ばれている人が打っても最後の湯がきが下手ですと”駄そば“になります。逆に少々手抜きに打っても釜前さんの仕事が良いと”美味しい麺“に変わります。
「生かすも殺すも釜次第!」。
最後まで手を抜かずに仕事をしなさい という戒めの言葉だったのです。
さて、当店でも夏場は暑さで腐敗の問題もあり今は止めておりますが、秋口から再開しようと思っております、”持ち帰り蕎麦“がございます。
ご家庭でも店と同じ味を…という訳で、生麺とお出汁をセットにして提供していますが、お客様からのお声で多いのが「上手く湯がけない」、「同じ味にならない」というのがございます。
そんな意見を踏まえて、少し湯がき方のコツみたいなものをお話しようと思います。もちろん、市販されている乾麺なり生麺でも同様です。
上手くいかない失敗例としましては、お湯の量が足りずに麺が湯の中で回らずに(踊るとも云います)ダマになって上がってしまったり、湯がき上がってからもたついてしまって、直ぐに冷水でしめられずにフニャフニャの蕎麦になってしまう…等々です。
改善出来る事例ばかりですので是非、参考にして下さい。
大体、生蕎麦100グラムを一人前とします。(市販の場合は記述してある通りで)。
そしてお家にある一番大きい鍋なり寸胴にお湯を沸かします。出来れば5リットル位は沸いていて欲しいです。そのお湯の中に(必ず沸騰している状態で)一人前を投入して下さい。必ず一人前ずつです。
大事なのは、そのお湯の中で麺をクルクルと対流させる事です。麺が湯の中で踊ると均一に湯がき上がりますし、上がりムラが出来ません。その為にたっぷりのお湯が必要なのです。
そしてもう一つ。規定の表示時間よりも早い段階でザルなり網を鍋に入れ、時間と同時に上げられる様に事前に用意します。この段取りの良さが味を左右するのです。上がった蕎麦はキレイにぬめりを取り、冷水でしめます。
うどんや素麺の様にもみ洗いせずに一定方向に回し洗いして、遠心力を使って優しく行います。こうすると切れません。
随分とエラそうに指南なんて言葉を使いましたが失敗しても何度か挑戦してみて下さい。いずれ上手くいくと思います。そして自分のものにしていって欲しいです。
何度も云いますが、たっぷりのお湯で少量ずつ湯がく、これがコツです。
上手くいきますと、この作業が楽しいものにかわります。そうしますと他の麺料理のバリエーションが広がってきますしね♪
「そんな、七面倒くさい事出来ひん!」って思われましたら迷わず当店の暖簾をくぐって下さい。首を長くしてお待ちしております。
何せ、うちの店は「生かすも殺すも、お客様次第!」ですので……m(__)m