23日(木)営業いたします

皆さま何時もありがとうございます。
今週の23日(木曜日)は”勤労感謝の日”ですので営業します。
明くる日の金曜日を振替休日とさせていただきます。
勝手申しますがご了承下さい。
沢山のお越し、お待ちしておりますm(__)m

「うどんや風邪薬」

皆様こんにちは、毎度お付き合いありがとうございます。
お越しいただく、お客様のお召し物の素材や色合いで秋の深まりを見てとれる今日この頃です。

さて今日は、奇妙な名前の風邪薬のお題で始まります。
うどんや風一夜薬」。
実際に今も流通しているれっきとした風邪薬の名称です。
うどんや風一夜薬

『株式会社うどんや風一夜薬本舗』さんの商品名で、明治の頃の大阪生まれの風邪薬です。当時の大阪の街に数多く存在した、「うどん屋」さんに卸して、熱いうどんを食べた後に服用して一夜で治そうという、一風変わった販売戦略です。

調べてみますと、その頃の江戸には「そばやの風一夜薬」もあった様で食文化の違いも垣間見る事が出来ます。
好きな上方落語にも”風邪” を題材にした「風邪の神送り」という演目があります。
今の様な薬が無かった時代に風邪で亡くなる人の多かった頃の話で、或る町内に風邪が流行り、若い衆が寄付を募り「風邪の神送り」を催そうと企てます。
紙で作った人形を「風邪の神」に見立て、お囃子と共にねり歩き、町内から追い出して最後には川に流して疫病に退散願います。
その紙人形は流された後、川下で行われている夜の漁の網に掛かります。
それぞれの人の情念が宿った人形ですので人の形にスッく、と立ち上がります。

漁師が「お前は何や?」と訊きますと
その人型は「俺は風邪の神や!」
漁師が一言、「あぁ、それで夜網(弱み)につけこんだな」
と、粋なサゲです。

もう少し寒くなりますと、マスク姿のお客様も増え、鼻声での注文回数も多くなってきます。
当店にも風邪の治癒に一役買う、温かいメニュー沢山ございます。
餡掛け(あんかけ)
鍋焼きうどん

“餡掛け”  “鍋焼きうどん”
もちろん、”うどん・そば” どちらの台でも出来ますが”餡掛け”には”うどん”の方が合う様に思います。
“餡掛け”には全て”おろし生姜”を盛りますし、”鍋焼きうどん”はグツグツと沸騰した状態で供します。
美味しい思いもして、身体の芯から温まってもらって風邪薬の効きも倍増です。

ちょっと引き始めかな?って思ったら是非お越しください。
“餡掛け”も沢山の種類がございますので、何度でも引いて下さい(笑)
まさに「うどんやの風邪薬!」

「そういうお前は、風邪引かへんのかいな!」って、ですか?
昔から云いまっしゃろ!
「アホは風邪引かん」て…。m(__)m

「”かえし”って何?」|kaeshi,dashi,出汁,だし,権兵衛,そば,北山

皆様、何時もありがとうございます。
朝夕の、吐く息の白さが多い日が続く様になってきました。
温かい食べ物がご馳走の季節到来です。

さて今日も、蕎麦屋の用語ですが、ご存知ない方も多いと思いますのでお話させてもらいます。


かえし」。
耳馴れない言葉ですが各店にとっては出汁の味を決める秘伝の調味料なのです。
「かえし」とは「煮かえし」の略で醤油に砂糖、味醂、酒等を加え、煮かえした”調味醤油”の事です。
この「かえし」を一番出汁や二番出汁で割って蕎麦の出汁を作ります。
“ざる蕎麦”や”せいろ”といったつけ麺用の汁を”辛汁(からつゆ)”又は”上汁(じょうじる)”。温かい吸い出汁用に割った汁を”甘汁(あまだし)”と店毎に呼び方は違いますが使いわけます。
当店は”甘汁”には「かえし」は使わず、一番出汁に直接、生醤油で味付けしていきます。
各店で仕様は異なりますが、作ったばかりの「かえし」は直ぐ使わずに暫く寝かせます。こうすることによって醤油の角がとれて味が丸くなっていくのです。
ここら辺の時間や温度管理といった事が各店の秘伝と呼ばれる所以じゃないでしょうか。

「かえし」にも何種類かあって、季節により使いわけたり”そば・うどん”での違い、先述した”辛汁・甘汁”での分別です。

〇「本かえし」

醤油に砂糖、味醂を加え加熱します

〇「生かえし」

砂糖、味醂だけを加熱し、非加熱の醤油に加えます

〇「半生かえし」

一部醤油を加熱し、砂糖、味醂を加え非加熱の醤油に混ぜ合わせます

〇「御膳かえし」

上記の出来上がった「かえし」に更に味醂を加え寝かせます

この四種類あります。最後の「御膳かえし」等は”御膳”と付くように、追い味醂をして更に寝かせるといった贅沢な仕上がりです。

ちょっと逸れますが「ざる」と「もり」の違いとは?って良く訊かれます。
今では海苔を掛けるとか、盛り付ける皿が違うと説明されますが、どうもこの「御膳かえし」で割った辛汁を「ざる蕎麦用」、普通の「かえし」を用いた物を「もり蕎麦用」と分けていた様で、そば粉の差異だけでなく「かえし」も使い分けていたみたいです。
自ずと値段も違ってきた訳です。

話、戻します。こうして作った「かえし」も寝かせる時間で刻々と味が変化してきます。
当店では「本かえし」のみで、つけ汁用の”辛汁”だけの使用になりますので、どうしても夏場の頻度数が多くなります。
東京修業時代のお店は季節により「本」、「生」、「半生」と取り分けていて味の違いに随分と驚いたものでした。
火を入れない醤油を使うと出汁で割った時にかなり醤油勝ちの汁になり、暑い夏場の汗の多い時節には良く合う様に思いました。

こんな大層に言っていますが、ご家庭でも真似してもらって常備しておくとかなり便利な醤油なのです。
調味醤油ですので”焼き鳥“や”うなぎ“といった”タレ焼き“に重宝しますし、”豆腐”、”納豆”にも良く合います。
これからですと”湯豆腐“の割醤油なんかにぴったりです。


おおよその割合は、醤油3に対して味醂1、砂糖は醤油の重量の10分の1位で美味しく仕上がると思います。
先ず、味醂を煮沸してアルコール分を飛ばします(火がつくので注意です)。
そこに醤油、砂糖を入れて加熱します。(鍋底に砂糖が焦げつかない様に混ぜながら)そして清潔な容器に移して、冷まして下さい。
カビが付く事が一番恐いので、水分が入らない様に注意して下さい。
直ぐに使えますが、一週間程寝かせますと角のとれたまったりとした味に変わってきます。
そのまま常温で保管して下さい。お気に召して減ってきたら、上から足し続けていけます。
糠床同様、「かえし」も家庭の秘伝に加えて下さい。

最後に、秋の夜長に”謎かけ”を一つ。
「蕎麦屋の美味しい出汁と掛けまして、上手な漫才師と解きます」
その心は?
「どちらも、”かえし”が一流です」

今月もよろしくお願い致しますm(__)m (^^;